再開。

会社員としての日々は巨大な資本主義に巻き取られてどこからか湧いて出てくるタスクをモグラ叩きのように潰していく作業に1日の大半を費やし、その1日の連続です。元々好きだった建築を仕事にして、その仕事内容は想像と大きな差はないもののやはり会社に属…

蠢き

壁を蹴り破ってもどこにもいけなかった10代をやり過ごして暫く、再び息の方を忘れた僕は喧噪の街を抜けここに戻ってきていた。汀の潮騒が吹き抜ける海辺の小さな部屋。強がりで辛うじて凝固した今にも崩れ落ちてしまいそうな部屋。 穴を塞いでいる壁紙を剥が…

海月たゆたう

生活にポッカリ穴が開いてしまってどのくらい経っただろう。もう喪失した空白の形すら思い出せないなあ。あれだけ読み込んだ本の一節さえ、いとも簡単にバラバラになって色を失ってゆくんだね。ねえ君は覚えていますか? 色とりどりの錠剤が胃に溶けて身体中…

6月1日

かつての常套句を口にする事さえ憚られるようになって、結んだ約束があんなにも脆いものだと気づかされたのはまだ寒い頃の出来事だった。 先延ばしになった、或いは自らそうしてきた物事がモゾモゾと動き始める音がする。ただ、弱虫なわたしはもう少しだけ曖…

作品1

風のさらさら流れる木立の丘に小さな一軒家。 病弱な少女は春の訪れとともに種をひとつだけ植えた。 それはまだ誰も知らない花。 名前さえもついていない花。 咲くかどうかも分からない花。 芽を出した葉は奇跡の色をしていた。 彼女はその小さな苗を育てる…

2日目:声の正体は

「ずっと逃げているだけじゃないか」 はっと目を覚ましたその一瞬、ここがどこだか分からなくなった。眠い目を擦りながら辺りを見渡すと、全てのシャッターが閉ざされた静かな商店街の中で自動販売機だけが煌々と光を放ち夜明けを待っていた。久しぶりの長距…

終わりに。

今日が救われるならそれでいいじゃないか そう自分に言い聞かせて、無垢の琥珀に包まれた綺麗な玉虫色を壊しながら溶けて崩れて縺れていった。きっと大丈夫、春の雪が全ての罪深いはぐれ者たちの足跡を消してくれるよ。またすぐに解けて、もう2度と交わらな…

忘却

目まぐるしく球体の中を廻る生活に かつてダンボールに詰めたはずの何かは遠心分離されてバラバラになってしまった。 青い日々がずっと続くと思っていた僕らの幼すぎる約束もいっしょに。 せっせと拾い集めようとしても 指の隙間からこぼれ落ちてしまう。 邂…

明日

少女は知っていた。翼の生えたブーツを持っていないことを。膨れ上がった自意識を抱えたまま、人間にも、虎にさえもなり切れずに、正しく並んだ真四角の箱の中で生き損なったその先の樹海でまた死に損なった。 少女は知っていた。どんな未来も愛せないことを…

1日目:百代の過客

8月26日の早朝、僕は東京駅にいた。解体した愛車MERIDA150を入れた大きな輪行バッグを抱えて周りの人に最大限気を遣いながら駅構内を歩く。速く走る事に特化した夢のマシンも解体してしまえば運びづらいだけの巨大な荷物だ。人の邪魔にならないようにわざわ…

0日目:となり町までの冒険

小学校1年生の頃、1歳年上の幼馴染ヤスと自転車に乗って隣の学区にある駄菓子屋に行った。世界の全てが町内で完結されていた当時の少年にとって、自分の力で学区の外に出て買い物をするという行為は特別で、ちょっとした冒険だった。学区の境界線である白岩…

さよなら宝島

彼は水没都市で暗い少年時代を送っていた。どこにいても息が詰まりそうで、いつも死に場所を探していた。ふとした事がきっかけで彼はノアの方舟のチケットを手にして、いつの日か旅立った。 かつての水没都市は時を経て宝島になっていた。幻の宝島にはもう忘…

夏を待っていました

6月の雨は過ぎ行く春を洗い流し夏を研ぎ澄ませていく。小説の一節に描写してあるような爽やかな風など吹くわけもなく、真昼の鮮烈な光線に晒されて額に浮いた汗は頬を伝い空気を切ってアスファルトを溶かした。 ドロドロになった地面はアイスクリーム。足を…

惑星探査

私はエイリアン 君に言葉は通じない 気持ちを詩に表せず メロディーも奏でられない 私はエイリアン 自ら放った核弾頭で星が消滅 ただ今はもう 悲しみだけが広がる荒原 私はエイリアン 知らない星に流れ着いて 帰り道はない 紅灯の海で 無機質な森で立ち眩む …

センター試験の必勝法教えます

明日はセンター試験です。試験会場になる大学は準備日である金曜日が休みとなり先週に引き続き3連休です。大学生はスノーボードなどに出かける人も多いのではないのでしょうか。嬉しい事に僕の通っている大学も試験会場です。金曜日から3日間は本来大学に入…